COLUMN
技術コラム
  • TOP
  • 技術コラム
  • E級アンプとは?高周波・高効率を実現する回路の仕組みと設計ポイント

E級アンプとは?高周波・高効率を実現する回路の仕組みと設計ポイント

E級アンプとは?

E級アンプ(Class-E Amplifier)は、FETを線形の増幅素子としてではなく、オン/オフを繰り返す「スイッチ」として動作させ、共振負荷回路と組み合わせることで、高周波電力を高効率に負荷へ供給するスイッチングモード増幅方式です。

なじみのあるA級・B級増幅との違いはここにあります。線形増幅ではFETが能動領域で動作するため、電圧と電流が同時に存在し、その積がそのまま損失(熱)になります。E級アンプではFETを飽和とカットオフの2状態だけで使い、切り替わりの瞬間に生じる損失を原理的にゼロへ近づけます。理論効率は100%に達し、MHz帯の高周波電力変換を担う代表的な高効率トポロジーです。

E級アンプを使用する目的

E級アンプを使用する主な目的は、次の2点です。

  • 目的1:高効率化(低損失化)スイッチング損失を原理的にほぼゼロにできるため、同一出力でも発熱が小さく、放熱器や冷却系を簡素化できます。その結果、電力密度が高まり、装置の小型・軽量・省エネ化につながります。
  • 目的2:高周波化への対応FETには出力容量$C_{oss}$(寄生容量)があり、通常のスイッチング回路ではこれが高周波化を妨げます。E級アンプはこの$C_{oss}$を共振ネットワークの一部として設計に取り込む構成のため、単純な直列共振方式では寄生容量が支配的になって成立しない高周波帯でも動作を維持できます。

E級アンプの仕組み

E級アンプの高効率を支えるのがソフトスイッチングです。

FETに並列なシャントキャパシタと、負荷側の直列共振回路が協調して、FETオフ期間のドレイン電圧波形を整形します。その結果、次にFETがオンする瞬間に次の2条件が同時に成立します。

  • ZVS(ゼロ電圧スイッチング): ドレイン電圧がゼロ
  • ZDS(ゼロ電圧微分スイッチング): 電圧の時間微分もゼロ

直列共振方式が「共振点で負荷に大きな電流を流すこと」を目的とするのに対し、E級アンプは「スイッチが切り替わる瞬間の電圧・電流条件そのもの」を設計対象とします。ドレイン電流とドレイン電圧の存在期間を時間軸上で分離する ― これがE級アンプ高効率の核心です。

E級アンプの回路構成

基本構成は次の4要素です。

要素役割
チョークコイル電源から準定電流を供給する
FETスイッチとして動作する
シャントキャパシタドレイン電圧波形を整形する(FETの$C_{oss}$を含む)
共振LC + 負荷負荷へ電力を伝達する

直列共振方式がL・C・負荷を直列につなぐだけの比較的単純な構成であるのに対し、E級アンプではチョークコイルとシャントキャパシタが加わり、スイッチ動作と共振ネットワークが一体で振る舞います。

設計上の要点は、シャントキャパシタにFET固有の寄生容量である$C_{oss}$を組み込むことです。通常は高周波動作を妨げる$C_{oss}$を、あえて共振設計のパラメータとして活用する ― この点がE級アンプの特徴であり、容量とインダクタンスの選定が動作条件を大きく左右します。

設計のポイントと注意点

設計の中心は、共振回路の各定数を適切に決め、オン遷移時にZVS/ZDS条件が同時成立するよう最適化することです。直列共振方式なら共振周波数の整合が設計の中心ですが、E級アンプではさらにスイッチングタイミングとドレイン電圧波形の整形を同時に満たす必要があり、設計自由度と難易度がともに高くなります。素子値は、目標出力電力・電源電圧・動作周波数から設計式で導出します。

注意点は次の3つです。

  1. 耐圧: ドレインピーク電圧は電源電圧の約3.6倍に達します。十分な耐圧余裕を持つデバイス選定が不可欠です。
  2. 負荷依存性: 負荷変動で最適条件が崩れやすく、対策が必要です。
  3. デバイス選定: 高周波帯では、低$C_{oss}$かつ高速スイッチングが可能なGaNデバイスの活用が有効です。

動作確認実績

  • 周波数範囲: 1.6MHz〜44MHzの各周波数で動作を確認しており(抵抗負荷)、さらなる高周波化を目指しています。
  • 振動子駆動: 抵抗負荷に加え、超音波振動子を負荷とした駆動でも動作を確認しています(〜30MHz帯)。

単純な直列共振方式では成立が困難な高周波帯でも、FETの$C_{oss}$を共振設計に取り込むE級アンプ方式により、スイッチング周波数の安定度が高い動作を実証しています。